みなさまの中にも便秘でお困りの方は、おられるのではないでしょうか?じつは子どもにも便秘があるのをご存知ですか?子どもの便秘は、決して珍しいことではなく10人に1人かそれ以上とも言われています。便秘のほとんどは機能性便秘と言われるもので、腸やその他の病気はないにもかかわらず、体質や不適切な生活習慣・食生活によって起こります。便秘によって治療が必要な場合を便秘症といい、1−2ヶ月続く場合を慢性便秘症と言います1)。
慢性的な機能性便秘症は、国際的な診断基準としてローマ分類 IV2)が用いられていますが、日常診療においては、便の回数が週に2回以下、もしくは5日以上出ない場合や、また毎日でていても、痛がって泣いてしまう、肛門が切れて血がでる、といった場合でも便秘症とされます。
表1 ローマ分類 IV
排便時の25%以上で以下の2項目の特徴が見られる
1.排便困難でいきむ 2.コロコロとした兎糞状便または硬便がある 3.残便感がある 4.直腸肛門の閉塞感がある 5.手で排便の促進を行っている 6.排便回数が週に 3 回未満である ・下剤を使わない状態で軟便になることは稀 ・過敏性腸症候群(IBS)の基準を満たさない |
(文献2より改変)
発症のピークは、2〜4歳時期のトイレットトレーニング期とされており3)、こうした時期に、排便時のいやな経験や、不適切なトレーニングが繰り返されてしまうことで、お子さんが便をすることを避けてしまう可能性があります。また、過度の干渉、家庭環境の変化、繊維の少ない食事、慢性的な脱水、低栄養などで悪化させることがあると言われています。
トイレでの排便をできるようになっても便の失禁が見られたり、排便時に強い痛みや出血を伴ったり、膝を交叉する仕草で排便を我慢するような姿勢が見られたりした場合には注意する必要があります。子どもの便秘は、放っておくと便秘の悪循環が起こり、きちんと治療しないと25%程度のお子さんが成人の便秘症へ移行4)してしまうとも言われていますので、おかしいなと思われた際にはすぐに小児科を受診しましょう。
エコチル調査大阪ユニットセンター 特任研究員
宮嵜 潤二
【参考文献】
1)小児慢性機能性便秘症診療ガイドライン.日本小児栄養消化器肝臓学会・日本小児消化管機能研究会編集. 診断と治療社. 2013.11.5.発行
2) Brian E. L, Fermín M, Lin C, William D. C, et al. Bowel Disorders. Gastroenterology 2016;150:1393–1407
3)Di Lorenzo C. Pediatric anorectal disorders. Gastroenterol Clin North Am 2001;30:269-287
4)Bongers ME, van Wijk MP, Reitsma JB, et al. Long-term prognosis for childhood constipation. clinical outcomes in adulthood. Pediatrics 2010;126:e156-162
【参考】
・日本小児栄養消化器肝臓学会. http://www.jspghan.org/