アトピー性皮膚炎は皮膚が乾燥しやすいため、保湿を含むスキンケアが大切です。今回、なぜ皮膚が乾燥しやすいか、そして保湿のためのぬり薬の使い方について説明しましょう。
皮膚の外側は角層と表皮でできています(図1)。
角層はレンガの壁の様な構造をしており、 強く壊れにくくできています。アトピー性皮膚炎ではこの防御壁が壊れやすくなっているのです。その原因の1つとして「フィラグリン」と呼ばれる物質 の減少が知られています。フィラグリンは角層を構成する角質細胞の柱を頑丈なものにします。このほ か、フィラグリンが分解されて生じるアミノ酸は天然保湿因子と呼ばれ、角層の潤いを保つのに役立ちます。アトピー性皮膚炎患者では、このフィラグリンが少なくなる傾向があり、皮膚のバリア機能を損ないます。そうなると図2に示すように皮膚炎を起こしやすくなります。
そのためアトピー性皮膚炎になったときは医師に相談の上治療し、保湿ぬり薬によるスキンケアを合わせて行うことをお奨めします。最近は生下時から保湿ぬり薬によるスキンケアを行うことでアトピー性皮膚炎になる子供の数が減ったという報告もなされました。またこれらの治療やスキンケアが食物アレルギーの予防あるいは軽減につながるとの報告もあります。
保湿ぬり薬をいつ、どのくらいの量を塗るかにはコツがあります。塗るタイミングですが、入浴直後の皮膚が潤っている時、すなわち脱衣所で体を軽く拭いたあとがよく、塗る量はたっぷり塗ります。その目安として塗った後にティッシュペーパーが皮膚に貼りつく程度を目安にします。是非、実践してみてください。
大阪大学大学院医学系研究科 皮膚科学教室
室田 浩之