ノロウイルス 嘔吐への対応-

 冬は感染性胃腸炎の流行シーズンです。新型コロナウイルスへの感染対策を背景に、2020年には感染性胃腸炎の報告数は激減しましたが、2021年以降はふたたび増加傾向が見られます1)
 ノロウイルスは、代表的な原因ウイルスです。10~100個程度のウイルス量でも感染し2)、嘔吐物や糞便が乾燥して付着した埃などからも感染することもあり、嘔吐物や糞便と、それらが付着した布類・器具類・環境の消毒と処理が大切です。新型コロナウイルス感染症の予防に効果的なアルコール消毒はノロウイルスには効果が低いため、消毒には塩素系消毒剤を用います。以下に、嘔吐物・嘔吐物の付着した衣類や布類の、消毒や処理の方法について記載します。

 

物品や環境の消毒方法

[1]次亜塩素酸ナトリウム
  塩素濃度0.02%(200ppm)に5分間、0.1%(1000ppm)に1分間浸すことでノロウイルスはほぼ死滅する4)
[2]亜塩素酸水
  遊離塩素濃度25~100ppm(含量:亜塩素酸として0.05~0.2%(約500~2000ppm)以上)3)
[3]熱湯消毒(85℃・1分間以上)3)
  衣類や布類、感染者の使用した食器類など。衣類・布類については後述。

 

家庭用塩素系漂白剤を使った[1]の消毒液の作り方

作りやすい量の目安

 家庭用塩素系漂白剤の多くは塩素濃度5~6%ですが、必ず表示を見て、製品の濃度と使用上の注意を確認します。劣化するので使用期限内のものを使い、子どもの手の届かない場所に食品とは別に保管します。
 作った塩素消毒液を入れるペットボトルや処理に使用するバケツは、きれいに洗ったものを使いましょう。
 また、誤飲の危険や、濃度の低下などがあるので、作り置きをせずに毎回使い切りましょう。ペットボトルには「消毒液!」「飲まない!」などと大きく書いておきます。
 嘔吐物は酸性なので、原液を直接かけると有毒ガスが発生し危険です。濃度、換気をしっかり守りましょう。また、消毒液の漂白作用、金属腐食作用に注意が必要です。

 

処理に必要な用具


 家庭用塩素系漂白剤、バケツ、消毒液であることを明記したペットボトル、
ペーパータオル・新聞紙・古布など、
ビニール袋、手袋、マスク、使い捨てエプロン

これらをまとめてセットにしておくと便利です。
使い捨てエプロンは大きなビニール袋(45ℓ)で作る方法もあるようです。

 
 

嘔吐物の処理

① 嘔吐物を新聞紙やペーパータオルなどで広めに覆い飛散を防ぐ。
② 嘔吐した人はその場で落ち着かせる。吐き気がおさまったら着替えなどをし休ませる。
③ 周囲の人は離れた場所に移動する。
④ マスク、手袋、使い捨てエプロン、(ゴーグル・フットカバー)をする。
⑤ 嘔吐物を静かに、しっかりとふき取る(外側→内側の向き)。
⑥ ふき取った新聞紙やペーパータオルは、すぐにビニール袋に入れ、口をしっかり縛る。
(できればビニール袋の中で濃い消毒液(0.1%)の消毒液に浸す)
⑦ ⑥を別のビニール袋に入れておく。
⑧ ふき取った後の床はペーパータオルなどで覆い、薄い消毒液(0.02%)の消毒液をかけて浸す。
⑨ 10分程度おき、水拭きする。
⑩ ⑦に使用後のペーパータオルや雑巾などを入れる。
⑪ 手袋、エプロン(外側を触らない)、マスクの順に外し、⑩に入れ、しっかり口を縛る。
⑫ 空気の流れに注意して(室内→屋外)換気を行う。
⑬ 最後に石けんで丁寧に手を洗う。うがいも忘れずに。

※換気のタイミングや消毒液の濃度については、今回は政府広報オンライン5)を参考に記載しました。

 

衣類、布類の処理

 衣類、布類は汚物を取り除き、薄い消毒液(0.02%)に漬けて消毒した後、他の洗濯物と分けて最後に洗濯します。肌着やタオルなどサイズの小さいものは家庭でも熱湯消毒することができますが、熱湯をかけるだけでは不十分です。鍋で煮沸、部分的な汚れならスチームアイロン(1か所あたり2分間以上)、などが有効です2)。ただし、漂白剤の作用や熱による生地の変質のため、消毒できない場合があります。素材や洗濯の表示を確認しましょう。

 消毒剤や吐物の凝固剤などが市販されており、介護用の吸水シートや、手洗い時ペーパータオルを利用する、などでも処理の負担を軽減できるかもしれません。色々な自治体のホームページなどに情報が載っているので、参考にしてみて下さい。

 
エコチル調査大阪ユニットセンター
小児科 野崎 史子

 
[参考資料]

1) 感染症発生動向調査(IDWR) 感染症週報 2022年第48週(11月28日~12月4日)
https://www.niid.go.jp/niid/images/idsc/idwr/IDWR2022/idwr2022-48.pdf
2)東京都健康安全研究センター「ノロウイルス対策緊急タスクフォース」最終報告
https://idsc.tmiph.metro.tokyo.lg.jp/assets/diseases/gastro/noro_task/final_report.pdf
3)厚生労働省「ノロウイルスに関するQ&A」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/shokuhin/syokuchu/kanren/yobou/040204-1.html
4)国立感染症研究所 感染症情報センター「ノロウイルス感染症とその対応・予防」https://idsc.niid.go.jp/disease/norovirus/taio-b.html
5)政府広報オンライン「ノロウイルスに要注意!感染経路と予防方法は?」
https://www.gov-online.go.jp/useful/article/201811/3.html

(2022.12.21アクセス)

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