身長と思春期-

 小学校高学年になり、徐々に体格や体つきが男性、女性にはっきりと分かれてくる時期かと思います。また、身長もこの時期からぐんぐんと伸びだす時期になります。一方で、周りの子と比べて成長が遅い、早いといったことが気になってくる時期です。多くの場合は個人差の範囲ですが、何らかの治療を要する病気が隠れている場合もあります。
 

思春期が早い/遅いの定義

 「思春期が早すぎる(思春期早発症 )」定義は、以下のようになっています。1)
男児:9歳未満で精巣の発育、10歳未満で陰毛が生える、11歳未満でひげ、脇毛、声変わりが起きる
女児:7歳半未満で胸が膨らむ、8歳未満で陰毛、脇毛が生える、10歳半未満で生理が始まる
 また、このような思春期の徴候が男児で13~14歳まで、女児で12~13歳までに現れない場合は「思春期が遅すぎる(思春期遅発症)」となります。2)
 性成熟の問題以外の先天的な病気が隠れている場合もあり、いずれも精密検査が必要となります。

 

成長にかかわる因子

 骨の成長には主に成長ホルモン、性ホルモン、甲状腺ホルモンが関係します。特に性ホルモンは思春期の時期に活発に分泌され、骨の成長を促しますが、同時に骨が成熟すると成長は止まります。したがって、身長については思春期までに対応することが必要です。思春期早発症の場合は一時的には同年代と比べて高身長になりますが、早く成長が止まるため最終的には低身長となります。

 

成人身長の予測値

 成人身長は、両親の身長によってある程度決まります。多くの場合は、男児は(父の身長+母の身長+13)÷2±9cm、女児は(父の身長+母の身長-13 )÷2±8cmの範囲内に収まるとされています。3)

 身長のスパートや思春期発来については、人により大きな差があるため単純に正常異常を語るのが難しい面もあります。ただし、明らかに基準と離れているものについては精査を行う必要があります。成長曲線は定量的に身長体重の増加ペースを見ることができる優れたツールですので、一度つけていただくことをおすすめします。

 

成長曲線をつけてみよう

 母子健康手帳や小学校の身長の記録などでも見る機会があると思いますが、お子さんの年齢ごとの身長体重をグラフに書いていくことで身長体重の推移を見ることができます。標準的な身長体重とどれくらい違うか、増え方は問題ないかといった具合です。
 成長曲線は日本小児内分泌学会のホームページ(下記URL)など、各所からダウンロードできます。

【日本小児内分泌学会ホームページ】 http://jspe.umin.jp/index.html

 成長曲線は、平均値からどれだけ離れているかをSD(標準偏差)で表します。±1SDの範囲は全体の68%、±2SDだと95%が入ります。±2SDの範囲内で曲線に沿って成長しているようであれば、概ね問題ありません。著しく低い/高い、曲線に沿わないほどの急激な成長が見られる、ある時から急に増えないなどは何らかの疾患を疑います。

・低身長・成長速度の低下
 原因として、ホルモン分泌不良の他、先天性疾患や心疾患、腎疾患、低出生体重児で生まれた、薬剤、栄養不足などが考えられますが、特に原因のない(特発性)ものもあります。また過剰な運動やダイエットで栄養不足となり、思春期が遅れたり骨密度低下から骨折しやすくなったりする場合があります。

・高身長・成長速度の増加
 原因として、先天性疾患、ホルモンの過剰な分泌、特発性などがあります。身長以外の症状も含めて原因を探す必要があります。

・検査
 各種ホルモンなどについて外来で測定し、年齢に比して明らかに低い/高い場合は、入院して分泌刺激試験(薬を使いどれくらいホルモンが分泌できるかの検査)を行います。また、ホルモンを分泌する器官に問題がないかを調べるため、頭部MRIを撮影します。他に、栄養状態の精査、先天性疾患の検査、腫瘍マーカーの測定なども行い原因を調べていきます。

・治療
 ホルモンの分泌異常が原因の場合は、主に注射で補充や抑制を行います。いずれも、診断基準を満たすことで公費医療の対象となります。また、分泌異常の原因となる病気や原因がある場合はその治療や対策を行います。

 

エコチル調査大阪ユニットセンター 小児科
中山 尋文

 

[参考]

1) 日本小児内分泌学会 ホームページ(2022.9.26アクセス)
2) 小児内分泌学 診断と治療社 日本小児内分泌学会
3) Tsutomu Ogata et al. Clin Pediatr Endocrinol. 2007;16(4):85-7.

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