手洗いと子どもの健康-

手洗いの重要性

新型コロナウイルスの世界的な流行にともない、感染予防対策として手洗いが注目され、実践されています。手洗いは、手や指を介してヒトからヒトへ感染するような感染症の防止に大変重要です。
手や指に付着したウイルスや細菌が鼻や眼、口から体内に入ることで感染症にかかります。体内に入らないように手や指に付着したウイルスや細菌を“洗い流す”ことで感染防止につながります。
 

手洗いの効果

手洗いによる感染症の予防効果の研究は多く報告されています。エビデンスレベル(科学的根拠の信頼性の度合)が高い研究を2つ紹介します。
1つめは、パキスタンの36地区を通常の石けんによる手洗い群、薬用せっけんによる手洗い群、対照群の3群にランダムに割り付けて行った大規模な研究です1)。15歳未満の子ども4691人(5歳未満の子どもは1510人)を対象に51週間追跡して、各群の呼吸器疾患、下痢、皮膚疾患の発症を比較しています。15歳未満の子どもでは手洗い群は対照群に比べて、軽度呼吸器疾患や下痢が半分に減り、膿痂疹のうかしん(とびひ)は3分の1に減りました。5歳未満の子どもでは肺炎が半分に減りました。また、通常の石けんと薬用せっけんとではその効果による差はなかったと報告されています。
2つめは、システマティックレビューといって30の研究を科学的にまとめた報告も有名です2)。手洗いにより呼吸器感染症は21%、下痢症は31%減少することが報告されています。手洗いの効果は感染防止に効果があることが科学的にも証明されています。

 

手洗いの方法

 では、正しい手洗いの方法はどのようなものでしょうか。現在は、石けんの各会社のホームページやYouTubeなどで正しい手洗い方法をすぐに視聴することができます。ここでは、厚生労働省3)が推奨している手洗い方法を紹介します。“手洗いの5つのタイミング”として、公共の場所から帰った時、咳やくしゃみ、鼻をかんだ時、ご飯を食べる前と後、病気の人のケアをした時、外にあるものを触った時としています。

正しい手の洗い方は、
手洗い前チェック:爪は短く切っておく

①流水でよく手をぬらした後、石けんをつけ、手のひらをよくこすります。
②手の甲をのばすようにこすります。
③指先・爪の間を念入りにこすります。
④指の間を洗います。
⑤親指と手のひらをねじり洗いします。
⑥手首も忘れずに洗います。

石けんで洗い終わったら、十分に水で流し、清潔なタオルやペーパータオルでよく拭き取って乾かします。

 

(首相官邸ホームページより転載)

 アメリカ疾病予防管理センターやアメリカ国立衛生研究所が推奨する手洗いも参考になります。少なくとも20秒石けんと流水で洗うこと、厚生労働省が推奨する5つのタイミング以外にトイレに行った後も重要なタイミングとしています。

子育ての中で、子どもに手洗いの重要性を教え、子どもが自ら実践して学んでいくことは、自分やみんなの「命を守る大切な習慣」を身につけることにもなります。ぜひ、重要なタイミングで正しく手洗いができるように、楽しく手洗い習慣を身につけてください。

 

エコチル調査大阪ユニットセンター
副ユニットセンター長 植田 紀美子
 

[文献]
1)  Luby SP, Agboatwalla M, Feikin DR, et al. Effect of Handwashing on Child Health: A Randomised Controlled Trial. Lancet. 2005;366(9481):225-33.
2)  Aiello AE, Coulborn RM, Perez V, et al. Effect of hand hygiene on infectious disease risk in the community setting: a meta-analysis. Am J Public Health. 2008;98(8):1372-81.
3)  厚生労働省ホームページ(国民の皆さまへ)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000164708_00001.html#kokumin(2020.5.14 アクセス)

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