「小児のけいれん」-

 10人にひとりが一生涯に何らかのけいれんを起こすと言われています。小児期は大人に比べて、けいれんを起こしやすい時期です。小児期のけいれんの代表は「熱性けいれん」と「てんかん」で、この2つについて解説します。

 熱性けいれんは医学的に「38℃以上の発熱に伴って起こる発作で、明らかな発作の原因がみられないもの」と定義されています。頻度は人種差があり、欧米(2~5%)に比べて日本人は100人に約8人(8%)と多いです。そのほとんどは身体の左右対称に起こる全身けいれんで、持続時間は1-2分以内と短いです。
 また、熱性けいれんを経験した小児の大半は一生の間に1回限りで、無治療で自然に治癒します。しかし、1回の発作が15分以上続いた場合、短期間に何回も熱性けいれんを繰り返す場合等には、発熱時にジアゼパムの坐剤(商品名ダイアップ)で予防を行うことがあります。熱性けいれんを何回繰り返しても、将来にてんかんを発症することはまれです。

 一方、てんかんによるけいれんは、熱性けいれんと異なり熱のない時にも起こることが特徴です。頻度は人口の100~200人にひとりで、小児期全体が好発年齢です。
 てんかん発作には、けいれん以外に非けいれん性発作があります。非けいれん発作は急に呼びかけに反応がなくなる、動作が停止する、顔色が不良になる等の症状です。もし、疑わしい症状があればビデオに撮って小児科の先生にご相談ください。脳波、頭部画像(CTあるいはMRI)、血液検査を行い、診断します。治療はお薬(抗てんかん薬)の内服が必要となりますが、一般に2回目の発作を起こした時点から開始されます。抗てんかん薬治療によりほとんどの患者さんは発作の抑制が得られます。難治に経過する場合には脳外科手術、食事療法(ケトン食)も選択肢となります。

 最後に、けいれんを起こしている我が子を前にすれば誰もが慌てます。しかし、何よりも重要なことは「慌てないで落ち着く」ことです。けいれん発作時の対応は熱性けいれんもてんかんも同じで、以下のようにしてください。

(1) 周囲に危険物があれば、安全な場所に移動する
(2) 衣服(特に胸元)を緩める
(3) 体と顔を横(側臥位)に保つ(誤嚥の予防です)
(4) 口の中には予防的に割りばし、タオル等は入れない
(5) 次の3点を観察する
 ・ 何分続いているか
 ・ 眼はどっちを向いているか
 ・ けいれんはどの部位か(全身?、左半身?、左上肢だけ?)
(6) 5分以上続くときは救急車を呼ぶ

 既にけいれんを繰り返し、医師から発作時のお薬を処方されている患者さんはその指示に従って投与してください。

 

大阪母子医療センター
副院長,小児神経科・主任部長 鈴木 保宏

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