人生の中では挫折や失敗、逆境に直面することがあります。レジリエンスとは、心理学分野では「困難を乗り越える力」あるいは「逆境からの回復力」などと定義されています。どのような困難にあっても、その困難を乗り越え、変化の多い時代にうまく適応していくための能力のひとつともいわれています。
今回は、米国心理学会が示している子どもたちがレジリエンスを育むためのポイントをご紹介します1)。
子どものレジリエンスを育む10のポイント
〇つながりを作る
友だちづくりを教えましょう。相手に共感できること、相手の痛みがわかることは友だちづくりの大切なポイントです。また、親子関係が安定し、きょうだいが仲良しであることも重要です。子どもが辛い体験をしたり、傷ついたとき、家族が子どもをしっかり支え、家族のきずなを強くしていきましょう。家庭が子どもにとっての良質な居場所となり、心のエネルギーの補給所となります。
〇人助けをする
自分が人や社会の役に立つことを教えましょう。家のことを手伝ったり、できる仕事を引き受けたりすることで、自分も役立てるということを実感できます。
〇日課を守る
規則正しい生活習慣を日課にして、子どもが自ら守れるように教え、支え、励ましていくことは、自立を促すという観点からも、小さい子どもには特に意味が大きいと言えます。
〇時には息抜きをする
日課を与えてきちんとした習慣を身につけさせることは大事ですが、本人の能力以上の課題は禁物です。また、子どもが悩んだり、不安でいるようなときには、気持ちを切り替えることも教えましょう。うまく息抜きすることや、気分を解放する力も大事です。
〇自分をケアする
適切な食事、適度な運動、気分転換などで自分をケアする大切さを親が身をもって伝えましょう。しかし、親が子どもの生活すべてを管理することではありません。子どもが自分を適切にケアできるように導くことが大切です。
〇目標を作る
実現可能な具体的な目標を定め、その達成をめざしてこつこつ取り組むことを教えましょう。それが小さなことでも、達成できたらほめてあげましょう。子どもはできないことよりもできることに目を向けるようになります。
〇自分を肯定的にとらえる
これまで自分が困難なときに上手く対応できたことを思い出させてあげましょう。困難を乗り越えた体験は次のチャレンジの大きな力になります。
〇物事を大きくとらえ、楽観的な見方をする
困った場面になったとき、状況を広い視野で捉え、長い目でみることを教えましょう。今が全てではなく、もっと先がある、別の手立てがあると考えられたら、辛いことがあっても人生には必ず良いことがあるという楽観的な見方ができます。
〇自分に気づくチャンスをさがす
困難な状況はしばしば自分自身について学ぶ機会となります。できること、どこまでならできるかを見極めたり、その状況が自分にとってどんな意味があるのか、子どもなりに考えるチャンスをさがすよう見守ってあげましょう。
〇変化を生活の一部として受け入れる
変化はときに子どもをひるませます。しかし、人生は常に変わっていくものです。その現実を受け入れることで、それまではできないと思っていた目標も新しく目標としてやり直せることも教えていきましょう。
エコチル調査大阪ユニットセンター 子ども療養支援士
江口 静香
[文献] 1) 小玉正博:つらい体験は子どもに必要かーレジリエントな子に育てる.児童心理2015;69(12):85-90