お子さんの成長は日々目覚ましいものですよね。今回は、ことばの発達についてお話しします。ことばの発達は、身体の発達以上に個人差があります。お母さん、お父さんは「うちの子はことばが早い方かな、それとも遅い方かな…」と考えることも多いでしょう。それでは、ことばの発達の流れについて見ていきましょう。
言語の発達
子どもが最初に発することばを初語といい、およそ1歳前後にみられます。初語の多くは「マンマ」「ワンワン」「ブーブー」などのように一つの単語であることから、一語文とも呼ばれます。単に「マンマ」というだけでも、状況によって「マンマ食べたい」「マンマがある」など様々な意味を持ち、文としても機能するからです。また、初語は「犬」ではなく「ワンワン」など、幼児語であることが多いといえます。これは周りの大人が子どもに向けて使っていることばを覚えているからであり、また発音のしやすさなども背景にあります(パ行、マ行、ヤユヨ、ワン、母音は習得しやすい)。ただ、大人と同じ意味で使っているとは限らず、同じ「ワンワン」でも、ある子どもにとっては『自分の家で飼っている犬』であり、別の子どもは『4本足の動物全般』を意味していることもあります。
豊かな言語環境がことばをはぐくむ
1歳前後で初語が出ても、すぐにことばが増えるわけではありません。しばらくは潜伏期と呼ばれる期間があって、2歳半くらいに爆発的に増えてくるのが一般的と考えられています〔⇒語彙の爆発〕。ことばの獲得には言語的な環境、特に親の関わり方が深く関係しています。例えば、初語が出る少し前から、子どもは身の回りのものを指さしするようになります。お子さんが「アーアー」と言いながら道端の花を指さししたら、まずは一緒にその花を見て〔⇒共同注視〕、そして「赤いお花だよ、きれいだね」と語りかけてあげてください。こうしたやり取りを繰り返すうちに、子どもは親のことばをまねるようになります。それが、ことばの獲得につながっていくのです。
単語の数が増えていく
単語を組み合わせることができるようになると、「でんしゃ、きた」「パパ、かいしゃ」のような二語文へと変化していきます。3~4歳頃になると、語彙数は1500~3000までに増加し、日常的な話しことばがほぼ完成します。この頃には、“相手のことばを聞いて自分が話す”という会話のキャッチボールができるようになり、コミュニケーションの道具としてことばを使えるようになっていきます。
文字に興味を持ち始める
一般的に、読む力は比較的早い段階から発達するといわれています。2~3歳頃になると、絵本や看板の文字を指でなぞりながら読むふりをしたり、自分の名前と同じ文字が使われている看板を見つけて喜んで報告したりしてくれます。一方、書く力が身につくのは、話しことばが完成してからであり、習得には時間がかかります。小学校に入る段階では、個人差が大きく、スラスラかける子もいれば、鏡文字を書いたりする子もいますので、幼児期から心配する必要はないといえるでしょう。
大阪母子医療センターエコチル調査室 臨床心理士
北村 真知子
【参考図書】林洋一監修(2010)『史上最強図解 よくわかる発達心理学』 ナツメ社.