今回のコラムは、“せいり”(生理)についてです。
エコチル参加者の中でも、“せいり”がはじまっているお子さんもいらっしゃると思います。体や心が大きく変化する時期なので、戸惑いもあるかもしれません。診療の現場でよくご相談いただくことについて、お伝えさせていただきます。
なお、専門用語では月経(げっけい)といいますが、今回のコラムでは “せいり”と表記します。
“せいり”はいつごろからはじまる?
はじめての“せいり”のことを初潮(しょちょう)や初経(しょけい)といいます。
エコチルにご参加いただいているお母さんたちの初経に関係する研究では、10~13歳に“せいり”を迎えた人が全体の78%を占め、14歳までに94%で“せいり”が始まっていました(参考文献)。生活習慣などの変化により、お子さん世代のほうが“せいり”の始まりは早まっているのでは、といわれています。
思春期に女性としての大人への体に変化している段階のうちの一つとして起こります。身長がのび、胸がふくらんできたら始まることが多いですが、すぐに身長の成長が止まってしまうわけではありません。体の変化がでてきたら、“せいり”の開始に備えて、ナプキンや専用のショーツなどがどんなものがあるか、見ておくとよいでしょう。15歳をこえても“せいり”がない場合は、一度婦人科へ相談してみてもよいと思います。
“せいり”ってなに?
子宮は、将来的に妊娠したときには、赤ちゃんを育てる役割があり、きんちゃく袋を逆さにしたようなイメージです。袋の内側に、内膜(ないまく)と呼ばれる部分があり、“せいり”の周期の中で分厚くなったあと、不要になったらはがれて、出血とともに体からでていきます。これが、“せいり”の出血です。
“せいり”の周期の中で排卵がおこりますが、初潮から数年の間は、無排卵周期症といって、排卵がおこらずその後自然と出血が始まることも珍しくありません。
“せいり”のトラブルに悩んだら?
痛みや“せいり”前後の体調不良などに悩むことがあるのは、おとなでもこどもでも変わりません。“せいり”が始まって間もないお子さんでの痛みは『機能性』といって、明らかな病気を伴わないが症状があるという場合がほとんどです。
無理をしないこと、年齢に対応した鎮痛剤を使用することが対処法になりますが、症状がひどい場合は、かかりつけの小児科や婦人科で相談しましょう。
また、学校で体調が急に悪くなった時や困った時、遠慮なく保健室の先生に相談しましょう。
“せいり”の間隔はどれくらい?健康のバロメーター?
初潮から1~2年くらいは、周期は不規則ですが、数年たつと規則的な周期になることが多いので、心配はいりません。ただ、10代の後半などで、日常的に激しい運動を行ったり体形を気にして食事量を制限したり、逆に極端に食事量をとっている場合などで、“せいり”が止まってしまうことがあります。数か月に1回は“せいり”が来ることが望ましいといわれています。
“せいり”用品が高い・買えない?
“せいり”用ナプキンは、雑菌から体を守り清潔を保つためにも1日最低数回は交換する必要があります。“せいり”用品は、使い捨てであってもなくても一定の費用がかかりますが、とくに最近、経済的な問題で“せいり”用品が買えない人が増えているといわれています。“せいり”用品を配布する取り組みをしている市町村や、公共施設で無料配布している場合もありますので、ぜひ確認してください。
手帳・カレンダーアプリや月経記録用のアプリなどで記録をつけることがおすすめです。まずは、始まった日・終わりの日の記録から、はじめてみてください。
エコチル調査大阪ユニットセンター
産婦人科 川西 陽子
<参考文献>
Kanno A, Kyozuka H, Murata T, et al. J Obstet Gynaecol Res.
2022;48(1):103-112.