長期休暇や夏休み、海外で過ごすお子さんも増えています。
子どもとの海外旅行、どのようなことに気を付けたらよいでしょうか。
1.旅行前の準備
子ども中心に計画します。衛生状態や治安がよく、比較的距離が近く時差の少ない国が無難でしょう。帰国後の休養も含め、スケジュールは十分余裕をとり、体調に合わせて変更可能なプランにします。
<予防接種:トラベラーズワクチン>
先進国で短期間の滞在ならば、BCG、4種混合(ジフテリア/百日咳/破傷風/ポリオ)、麻疹・風疹、(水痘、B型肝炎)の定期接種を通常通り済ませます。
渡航前に各地の検疫所(電話相談あり)やトラベルクリニック・病院の渡航外来に相談し、目的地や流行状況に応じて必要なワクチンを接種しましょう。
接種回数や免疫機能の安定を考え、遅くとも4週間前までには接種が終了するように、余裕をもって受診しましょう。
<持参薬>
整腸剤や風邪薬、解熱鎮痛剤などを少量持参します。これらの薬で対応できない症状は現地の医療機関受診を考えます。
喘息の常用薬、アレルギーのエピペン、糖尿病のインスリンなど、持病に必要な常用薬は、旅行日数分+1週間分程度余分に持参しましょう。荷物の紛失の可能性を考え、必ず機内持ち込みの手荷物に入れます。
このような持病があるときは、病名・薬剤の成分・既往歴・アレルギー・主治医の連絡先などを記載した英文診断書を作成してもらい、携帯しましょう。持病がなくても、海外での急な受診時に、子どもの既往歴やアレルギーなどの情報を伝えられるよう、簡単な英語でよいので準備しておくと安心です。市販の自己記入式安全カルテ参照5)などが役立つかもしれません。
小児用自己記入式安全カルテ
(日本旅行医学会ホームページより転載)
2.飛行機内での注意
飛行機内では、気圧の変化から耳痛がおきることがあります。耳に小指を入れて圧迫し離す耳ポンプ法文献1)などで軽快する場合があります。
中耳炎や副鼻腔炎は悪化の可能性があり、事前に耳鼻科医に相談しましょう。
3.現地で気をつけること
<熱中症>
海やプール、また車内でも注意が必要です。海外では適時・適切な水分補給が難しいこともあるので、飲用水は常に携帯しましょう。
<日焼け>
海辺や標高が高い所、雪のある所などでは、日焼けによる皮膚障害・角膜障害・結膜障害を防ぐため、子どももUVカット機能のあるサングラスや衣類(帽子・ラッシュガード)、日焼け止めを使用しましょう。
<高山病>
スキーリゾート、南米など標高が高い場所では高山病の危険があります。疲労感や嘔気・頭痛などがあれば、無理せず下山を検討しましょう。
その他、旅行者下痢症や生物による咬刺症、ダイビングでの潜函病などに注意が必要です。子どもは症状をうまく伝えられないことも多く、保護者が健康リスクを頭にいれておくことが大切です。
4.旅行保険の加入
海外では医療費が非常に高額になることが多く、旅行保険の加入は重要です。保険によっては、日本国内での同等の医療への相当額しか受け取れなかったり、受診前に保険会社に承諾を得る必要がある場合もあります。クレジットカードに付帯の旅行保険も、そのカードで旅行代金を支払った場合のみの補償であるなどの制約がつくことがあるので、補償内容や条件について、早めに、よく確認しておくことが大切です。
5. その他の情報源
海外では、自然環境、ライフスタイル、衛生環境の変化から、健康問題がおきることはまれではなく、言語や文化の違いから対応が難しいこともあるでしょう。事前に準備することで、旅をより安全に楽しむことができるといいですね。
ホームページ | 内容、URL |
---|---|
厚生労働省検疫所FORTH | 感染症流行状況、検疫所、予防接種機関など |
https://www.forth.go.jp/index.html | |
国立感染症研究所 | 感染症情報 |
https://www.niid.go.jp/niid/ja/ | |
外務省 | 海外渡航・滞在、各国の医療事情に関する情報 |
https://www.mofa.go.jp/mofaj/toko/index.html | |
外務省海外安全ホームページ | 海外の治安情勢など |
https://www.anzen.mofa.go.jp/ | |
日本旅行医学会 | 予防接種機関検索など |
http://jstm.gr.jp/ | |
日本渡航医学会 | トラベルクリニック検索など |
http://jstah.umin.jp/50Inbound/index.htm |
表)インターネットで検索できる海外情報
エコチル調査大阪ユニットセンター
小児科 野崎 史子
[文献]
1) 小川富雄:子どもの海外旅行.小児科 52:437~442,2011
[参照]
1)厚生労働省検疫所FORTH:https://www.forth.go.jp/index.html
2)国立感染症研究所:https://www.niid.go.jp/niid/ja/
3)外務省:https://www.mofa.go.jp/mofaj/toko/index.html
4)外務省海外安全ホームページ:https://www.anzen.mofa.go.jp/
5)日本旅行医学会:http://jstm.gr.jp/
6)日本渡航医学会:http://jstah.umin.jp/50Inbound/index.htm
(2019年4月8日アクセス)