病院へ行く前の心の準備-

 お子さんが病院を受診するとき、皆さんはお子さんにどのように話していますか?今回は病院を受診する際の「心の準備」についてご紹介したいと思います。

子どもの認識

 子どもたちは医療を受けるとき、どのような思いを抱えているのでしょうか?以下の表は、子どもたちの「病気の原因と医療行為や医療者に対する認識」を年齢別に示したものです。

 上記の表からもわかるように、7歳未満の子どもは「医療行為は医療者から受ける罰」と捉えてています。そのため、病院へ行く目的や、病気や病状、処置・検査等について話すことで、お子さんの理解を促し、誤解の解消・不安の軽減につながります。

子どもへの伝え方

 ではどのように話せばよいのでしょうか?今回は幼児期後期(3~6歳)に焦点を当て、話をするときのポイントを述べていきます。

〇病院へ行く目的を伝える。
 上の表のステージ1にあるように「自分が悪いことをした罰として病気になった」と思わせないことが大切です。この点については、事前に病院へ行く目的を伝えることで誤解を取り除くことができます。例えば、発熱などの病気で、病院へ行くときには、「〇〇ちゃん/くんが今、しんどいのは熱が出ているからだよ。熱が出ているのは病気のせいなの。身体の中に悪いバイキンさんが入っちゃったかな。病院へ行って、お医者さんに病気を治してもらおうね」と伝えます。そうすることで、“感じている症状”や“目に見える症状”を伝えると病気や病状についての理解を促すことができます。また、自覚症状がない場合は、「おしっこを調べてもらったら血が混じっていたの。おしっこをつくるところが病気になってないか、お医者さんに調べてもらおうね」と伝えることができます。

〇正しい情報を伝える。
 安心させるために事実と異なる内容を伝えると、子どもたちは親や医療者に対して不信感を抱いてしまいます。どれくらい時間がかかるのか(例:「アンパンマンの話が1回終わるくらい」等)、どんな感じがするのか(例:「チクッとするよ」「ちょっと冷たいよ」等)、お母さんと一緒にいられるのか等、具体的に伝えることで、処置や検査に対して見通しがつきます。

〇子どもの知ってる言葉でわかりやすく伝える。
 普段より親しみのある言葉を用いることで理解を促すことができます。その際、響きの柔らかい言葉を用いることで、やさしい印象を与えることができます。例えば、注射の場合は「チックンするよ」等と表現します。また「針を刺す」と表現するよりは「針を入れる」の方がやさしい印象になります。

〇子どもの思いを受け止める。
 処置・検査について話をすると、お子さんが「痛い?」「すぐ終わる?」等、いろいろと質問してくることがあります。過去の医療体験で怖い思いをしている場合は泣きだしてしまうこともあるかもしれません。子どもたちの思いや不安を一つひとつしっかりと受け止めてあげてください。話をする際、絵本や紙芝居・人形劇などを行うと、物語性があり、幼い子どもたちにとって理解しやすくなります。そして、話の後も子どもたちが自由に絵本を見る、人形で遊ぶなどのような時間をもつと、より子どもたちの気持ちを知る機会をもつことができるようになります。

さいごに

 3歳も後半頃になると子どもたちは他者の期待や要求を指針にし、自分の行動を調整できるようになりますが、それまでは難しいこともあるでしょう。しかし、心の準備をする目的は子どもたちに大人の要求通りにしてもらうことではありません。処置・検査後、子どもたちが「自分は頑張った」という思いをもつことができるようになることが大切なのです。ですから、病院受診後は、お子さんをたくさん褒めてあげてください。そして、処置や検査の内容によってはどうやってお話すればよいのか悩まれることもあると思います。そういうときは是非、医師や看護師に相談してみてください。きっと力になってくれます。なぜなら、医師や看護師、その他小児医療に関わるスタッフは全て、子どもたちの味方なのですから。

 

大阪母子医療センターエコチル調査室
子ども療養支援士 江口 静香

[文献]
・麻生武・浜田寿美男編『よくわかる臨床発達心理学 第4版』ミネルヴァ書房、2014年
・五十嵐隆・林富監修『子ども療養支援 医療を受ける子どもの権利を守る』中山書店、2014年
・原田加奈・相吉恵・祖父江由紀子編集『医療を受ける子どもへの上手なかかわり方』日本看護協会出版社、2013年

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