水の事故-

夏が近づいてきました。水辺のレジャーが楽しい季節ですね。
しかし同時に、水の事故が増える季節でもあります。

統計

こども家庭庁の資料によれば、2022年、0~14歳の子どもでは、すべての死因の中で「不慮の事故」による死亡が上位を占めています。
2018~2022年の5年間では、「不慮の事故」による子どもの死亡のうち、1歳と5歳以上の死因の第2位が溺水でした。1歳では家の浴槽でおぼれる事故が多く、5歳以上になり屋外での活動が増えると、「川」や「海」など、自然の水辺での事故が多くなります(1)
2022年の1年間に水の事故にあった中学生以下の子どもの数は198人で、そのうち26人が、亡くなったり行方不明になりました(2)
 

水の事故の恐ろしさ

子どもは、おぼれる時、叫んだり暴れたりすることなく水に沈むことが多く、「子どもは静かにおぼれる」といわれています。日本小児科学会のアンケートでは、子どもがおぼれる事故にあった保護者の86%が、「悲鳴や助けを求める声が聞こえなかった」と答えました(3)
子どもはたった2.5㎝程度の深さの水でおぼれることがあります(3)。また、おぼれると重篤な状態になりやすく、おぼれた状態が5分以上続くと脳に後遺症が残る危険があります。
 

屋外での水の事故から子どもを守る

川や海など、屋外での水の事故から子どもを守るために、次のポイントに気をつけましょう(4)

➀「立ち入り禁止」の場所には近づかせない
ライフセーバーや監視員がいる、管理されて安全な所で泳がせましょう。

②体調が悪いときには無理をさせない

③一人で行動させない
また、出かける前には家族やまわりの人に行先・帰宅時間などを伝えさせましょう。

④子どもから目を離さない
特に、泳げない子どもや乳幼児は、常に手の届く範囲で見守りましょう。

⑤水辺では、大人も子どももライフジャケットを着用する

ライフジャケットには公的機関などが性能を保証しているものがあります(桜マーク[図]、CSマークなど)。着用するライフジャケットの性能をあらかじめ確認し、使う前には点検をしましょう。
子どものライフジャケットには「幼児用」「子ども用」などのサイズがあります。水中で脱げないよう、体にフィットするものを、正しく着用しましょう。海上保安庁などのサイトで、つけかたを動画で見ることもできますよ (5)

⑥連絡手段の確保
保護者は、ストラップ付き防水パックなどで携帯電話を身につけましょう。
救助の連絡、GPS機能による正確な位置の把握などに役立ちます。

あらかじめ、お子さんと、浮輪やサンダルなどの持ち物が流されても取りに行かないように約束しておくことも大切です。

川では、安全そうに見えても、地形や流れの影響で思わぬ危険が隠れています。また上流での豪雨による急な増水で、水難事故につながる危険性があります。

・上空に黒い雲が見えてきた
・雷や雨
・落ち葉や流木・ゴミが流れてきた
・水が急に冷たく感じる
・水位が急に低くなった

などは急な増水のサインです(4)。すぐに避難してください。
天気予報や雨雲レーダーを利用したり、国土交通省のサイト「川の防災情報」などで気象状況や洪水の危険度などをチェックすることができます。
 

おぼれてしまったら

[おぼれている人]
おぼれてしまったときには、あおむけで大の字になり口元を水から出して浮く「背浮き」で救助を待つのが基本です。一度、練習しておくことをお勧めしますが、波や流れのある海・川では実際には難しいこともあるかもしれません。その場合は自分の楽な浮き方で呼吸を確保しましょう。一番有効なのは、ライフジャケットの着用です。
 

[まわりの人]
1)まず通報
おぼれた人を見失わないようにしながら、落ち着いて、「110番(警察)」「119番(消防)」「118番(海上保安庁)」に救助を求めます。海水浴場では監視員、ライフセーバーや周りの人に知らせます。

2)自分の安全を第一に
救助のために水に入るのは大変危険です。一人で助けようとせず、水に浮く道具を集めたり、AED(自動体外式除細動器)などの準備をします。

3)身の回りの浮くものを溺れている人の近くに投げ入れる
ライフジャケットや、浮輪などのフロート遊具、ボディボード、ビート板などの他、大きめのペットボトル、ビーチボール、クーラーボックスなどが利用できます。ペットボトルはキャップを閉めましょう。水や砂を少し入れると投げやすくなります(6)

届く距離であれば、タオルや棒などを陸上から差し出したり、浮き輪などにロープをくくりつけて投げ入れてつかまらせ、陸上に引きあげる方法があります。救助する人は、しっかりした足場を確保し、頑丈なものにつかまったりして、自身の安全に気を配りましょう。
 

おぼれたときの応急処置のポイントを表にしました。

表.日本小児科学会「子どもの予防可能な傷害と対策:水遊びと安全」より作成(7)

 

安全に、楽しい夏の思い出ができるといいですね。
 

 

エコチル調査大阪ユニットセンター
小児科 野崎 史子
 

<参考資料>
(1)こども家庭庁:こどもの不慮の事故の発生傾向と対策等
【資料1】こどもの不慮の事故の発生傾向と対策等(こども家庭庁) (cfa.go.jp)
(2024/7/10アクセス)
(2)警察庁:令和5年における水難の概況 r05_suinan_gaikyou.pdf (npa.go.jp)
(2024/7/10アクセス)
(3)日本小児科学会:子どもの予防可能な傷害と対策(医療者用)「溺水」
https://www.jpeds.or.jp/uploads/files/sho_jiko_ms_05.pdf

(2024/7/10アクセス)
(4)政府広報オンライン:水の事故を防ごう!海や川でレジャーを楽しむために知っておきたい安全対策
https://www.gov-online.go.jp/useful/article/201608/1.html

(2024/7/10アクセス)
(5) 国土交通省 https://www.mlit.go.jp/maritime/maritime_fr6_000018.html
(2024/7/10アクセス)
(6) 海上保安庁:ウォーターセーフティガイド https://www6.kaiho.mlit.go.jp/watersafety/
(2024/7/10アクセス)
(7)日本小児科学会:子どもの予防可能な傷害と対策(保護者用)「水遊びと安全」
https://www.jpeds.or.jp/uploads/files/sho_jiko_g_11.pdf

(2024/7/10アクセス)

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