男性の育児休暇の現状
最近、男性の育児休暇の取得が少しずつ広まっています。小泉環境相が第1子出生時に大臣初の育児休暇を取得したニュースは記憶に新しいと思います。周囲の男性でも育児休暇を取得したとよく聞くようになりましたが、未だ本邦では令和元年の男性の育児休暇取得率は7.4%と女性の83.0%と比較して低いのが現状です。政府が令和2年5月に閣議決定した少子化社会対策大網での「2025年の30%」の目標には程遠いです。
しかしながら、公益財団法人日本生産性本部が2017年に施行した新入社員秋の意識調査では「子どもが生まれた時には育児休暇を取得したい」と答えた男性の割合は過去最高の79.5%という結果で、若い世代では意識が変わってきています。
こんなにある日本の育児休暇制度
育児休暇とひとえに言っても様々な種類が存在します。表を見ても分かる通り、男性の場合は女性に比べ、子どもに関連して取得できる休暇の種類はまだ少ないのが現状ですが、意外と種類がある事に驚きます。出産前後で取得できる育児参加休暇(5日)、出産後に取得できる妻の出産補助休暇(2日)、出生後には育児休業、育児短時間休暇、子の看護休暇、参観休暇など多岐に渡ります。但し、職種や職場により取得できる休暇が変わってきますので、皆様の働いている職場に必ず事前にご確認ください。
(参考:愛知県人事委員会事務局公式サイト)
日本の育児休暇の制度上の問題点
日本の育児休暇制度上問題点はいくつかあります。一つは表を見ても分かる通り妊娠初期から男性が取得できる休暇がない事です。妊婦さんの中にはつわりが動けなくなる程重度な方もいて、出産前に手助けが欲しいとの声も強く、制度の改正が待たれます。
もう一つは育児休暇中の補償です。現状では育児休業給付金として休業前賃金の67%が補償されますが、長期的に取得すると経済的問題が発生します。今年5年毎に見直される少子化社会対策大綱では育児休業給付金の引き上げも検討されましたので期待できます。
育児休暇は父親になる上での大切な「育親期間」
実は自分も男性新生児科医としては珍しく、第3子出生時に育児休暇を取得しました。当初は忙しい勤務シフトから自分1人が抜ける事は憚られ乗り気ではなかったのですが、さすがは小児専門病院のスタッフは志が高く、スタッフからは歓迎ムードでした。
大阪母子医療センターの男性医師で初取得という事もあり、取得するなら真剣に取り組もうと約1ヶ月、家事全般と3食の食事を担当しました。毎日献立を考える事がいかに大変か、また家事の膨大さと終わりの無い仕事量は普段の医師業務に比べ遥かに大変だと思い、世の中のお母さん方の凄さを改めて実感しました。
著者の渾身の手作りハヤシライス(2019年12月21日)
少子化対策に成功した国として知られるフランスでは3日間の出産有給休暇と11日間の「子どもの受け入れ及び父親休暇」があり合計14日間の育児休暇があります。拒んだ雇い主は罰則もあり、その結果取得率は9割近いそうです。フランスの人々は「男の産休」と呼ぶ程です。
我が子を出産した母親は最初からお母さんになれるわけでなく、みんな「お母さん1年生」です。これは父親にも該当する事で、父親にも「育つ」期間が必要なのです。それが父親の育児休暇の本当の意義だと私は思います。
大阪母子医療センター
新生児科 今西 洋介